2018年1月6日土曜日

善悪の線引き

昨日の晩は妻とその友人N子さんがカラオケに行くというので、娘のサラちゃんを我が家で数時間預かりました。日米ハーフの彼女は、もうすぐ高校を卒業する17歳。去年フィールドホッケーで地域のMVPを獲得した、バリバリのアスリートです。私のお手製しめじパスタで晩飯を済ませた後、さっさとひとり居間へ移動してネット動画を観始めた16歳の息子を放置し、サラちゃんと二人食卓を挟んで話し始めました。男兄弟で育った上に、ほぼ女子抜きの高校・大学生活を送った私。お年頃の女の子が普段何をしてどんなことを考えているのか、興味津々でした。

クラブでのライバル関係、別れた彼氏のこと、それに希望の職業、など様々なテーマで語ってくれたサラちゃん。思い切って、最近気になり始めたマリファナ(大麻)の話題を振ってみました。

「なんでみんなあんなものに手を出すのか分かんない。」

と首を振る彼女。彼女の高校では大麻を吸っている人がうじゃうじゃいて、隣の席の子は四六時中マリファナ臭を放ってる、というのです。

「これやってみなよって錠剤渡されたけど、要らないって断った。」

最近になって大麻の使用を合法化したカリフォルニア州ですが、そうなるずっと以前から広く出回っていて、高校生や大学生が簡単に入手出来る状況。合法とはいえ21歳までは使用禁止なので、捕まれば一応大問題です。サラちゃんの高校では、麻薬犬を連れた警官が時々抜き打ちでやって来て検査をする、とのこと。

実はつい先日も職場でのランチ中に大麻の話題が出て、それで気になっていたのです。若い部下のカンチーとテイラーは、大学時代にクラスメート達が当たり前のように吸ってたと言うし、気持ちが落ち着くのもあればハイになるものもあって、種類は様々なのよ、と使用経験を匂わせる発言。

「シンスケだって、六本までだったら自宅の庭で育ててもオッケーなのよ。」

と、UCサンタバーバラ校出身のテイラー。カンチーの通ったUCサンタクルーズ校では、毎年4月20日の「大麻の日」になると、キャンパスの真ん中で煙モクモクの大パーティーが開かれていたそうです。

「州が合法化したってことは、知事も賛成してるってことだよね。何だか不思議。日本でマリファナの使用が見つかったら、即逮捕なのにさ。」

と私が感想を漏らすと、少し離れた席でランチを食べながら話を聞いていた古参社員のビルが、

「あの知事は若い頃、ヒッピーみたいな奴だったんだ。歌手のリンダ・ロンシュタットと付き合ってたりしてさ。その頃は間違いなく吸ってたし、今でも絶対吸ってるね。」

と笑います。

その晩帰宅すると、妻がYouTubeで「バイキング」という番組を観ていました。刑期を終えて復帰した高樹沙耶が大麻所持の罪を反省したとかしてないとかで、司会の坂上忍ともめています。カリフォルニア州じゃ笑って済まされるようなことでも、日本の法律や世間は簡単に許してくれないんだなあ…。

さて、サラちゃんとの会話に戻ります。彼女が最近一番頭に来ていることは、YouTubeで注目を集めているローガン・ポールという若いアメリカ人俳優の狼藉ぶり。日本へ旅して青木ヶ原で生々しい映像を撮ったり、東京の路上で突然ズボンを脱いだり、築地市場内を忙しく行き来するターレットトラックに飛び乗って運転手を驚かせたり、生の魚を手に持って振り回しながら雑踏を歩いた挙句、タクシーのボンネットに置いて立ち去ったり、と、それはもうやりたい放題。一連の公開ビデオを私に見せながら、自分がこれほど大事に思ってる祖国を馬鹿にするような態度は許し難い、と憤りを露わにするサラちゃん。あんな奴、永久に入国禁止にすべきなのよ、と首を振ります。路上で職務質問をしていた警官にポケモンのぬいぐるみを投げつけてイラっとさせる映像では、

「なんでポリスなのに何もしないのかしら。アメリカだったら撃ち殺されるところよね。」

とコメント。う~ん、それはそれでコワいぞ。

かつて日本テレビの「電波少年」という番組で、アポなし取材と称して松本明子がアラファト議長を訪ね、ハンディカラオケ機で「テントウムシのサンバ」のデュエットを申し込む、という企画がありました。あれだって下手すりゃ国際問題レベルの暴挙でしょう。ここを超えたら罪になるぞ、というポイントは、状況によってグラグラなのかもしれません。何にしろ、ハーフのサラちゃんが日本のことをそんなに大事に思っているということが、ちょっぴり嬉しかったのでした。

さて、5年ぶりの一時帰国が間近に迫って来ました。そろそろスケジュールを詰めなければなりません。まずは久しぶりの日本で一番したいことが何かを妻とブレーンストームした結果、やはり「美味しい物が食べたい」に落ち着きました。滞在中は、出来るだけ安くてウマい物を楽しみたいよね。こないだグルメ番組で取り上げられてたあのレストランにも行ってみたいねえ、と話していた時、日本ではB級なお店ほど店内喫煙を許す傾向がある、ということに思い至り、二人で急速に元気を失って行きました。

カリフォルニアでは、建物内は元より歩道上でも禁煙なので、普段の生活で煙草の臭いを嗅ぐことがまずありません。知り合い全部を集めても、喫煙率は1パーセントに満たないでしょう。昔から、煙草の臭いには極度に敏感な私。飲食店の扉を開けた瞬間、たとえそれが残り香程度のレベルでも鼻がその粒子を感知すると、一気にテンションが下がるのですね。

「なんかブルーになって来た。」

と私。

大麻はオッケーなのに煙草禁止のカリフォルニアと、大麻所持者を社会的リンチにかける一方で喫煙者には甘い日本。善悪の境い目って、結構曖昧なものなんだなあ、としみじみ思うのでした。


4 件のコメント:

  1. アメリカでも大麻は[OK]かもしれないけど喫煙条件についてはタバコと同じように厳しい条件はあるんじゃないの?要は「大麻≒タバコ」って認識なんでショ。
    大麻はお酒のような嗜好品になるので、タバコのチェーンスモーカーみたいにスパスパ吸うものではないため、周囲に与える害は少ないって人たちもいるようだね。

    大麻の効果はベロンベロンに酔っぱらって楽しくなっちゃっている状態に近いものなので・・・・コホン らしいので、他の麻薬経験者の話のように[夢のような感覚]とか[見たこともないような幻想的なイメージ]に比べると、常習化したときの麻薬性とか禁断症状がひどくないとは言われているね。
    映画の中でも、「大逆転」とか「プラトーン」とか「ポルターガイスト」とか本筋と関係ない所でなにげなく大麻を使うシーンが出てたりするヨ

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    1. 日本では本格的なドラッグへの入り口になりやすいという理由で厳しく制限してるのだろうけど、アメリカで沢山の大麻経験者が普通に社会生活を送っているところを見ると、それほど目くじらを立てる対象でもないのかな、という気にさせられるね。

      我が家の二軒先には若い男性が三人で住んでいて、週末になると裏庭でがんがん音楽かけてマリファナパーティーをやってる模様。結構な異臭なので、窓を閉めないとたまらんのだよね。ま、すぐ隣に住んでる女性がたまにパティオで吸ってる煙草の方が百万倍くさいんだけど。

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  2. ローガンなる若者の〃がは日本のニュースバラエティでもちょくちょく放送されていたネ。彼のやっているのは大阪弁でいう所の正に「イチビリ」ってやつで、面白さがまったく伝わってきていなかった。あれのどこが受けて[人気youtuber]として扱われているのだろう?
    ああいった局面で[マジでコワい職業の方々]が出てきてボコボコにして立ち去るってのがあれば爽快なんだろうが、今度は警察が対暴法とかを振りかざしてここぞとばかりに取り締まったりするんだろうね。そんな時くらいは目をつぶるとか粋な計らいができればイイんだけどな~

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    1. あ、日本でも話題になってたのね。彼はとにかく、「リスペクトを大事にする国でここまでやっちゃうよ、俺」みたいなノリで笑いを獲ろうとしてたね。右翼の街宣車に囲まれるくらいのピンチを味合わせてやりたいな、と思ったよ。

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