2017年12月16日土曜日

Houston, we have a problem. ヒューストン、問題発生!

二週間ほど前のある朝、本社副社長のパットから「ちょっと話せる?」とテキストが入りました。あるパイロットテストに取り組もうとしているのだが、現場の人間の力添えが必要だ、とのこと。

「毎週月曜の朝、全米のPM達に向けてコストレポートのリンクを送るキャンペーンを始めようとしてるの。」

自分の担当プロジェクトに最近チャージされたコストを一覧出来るレポートは、既にシステムの中に組み込まれていて、皆いつでも閲覧出来ます。しかしPM達の多くはそのボタンの存在すら知らず、またたとえ知っていたとしても、多忙なため毎週チェックする者はほとんどいないのが現状。もしも毎週月曜の朝一番にメールが届いて、そこにリンクが貼られていれば、利用率は飛躍的に向上するだろう。しかし問題は、肝心のレポートがユーザーフレンドリーと言うには程遠い代物で、本当に知りたい情報を引き出すのに数ステップのボタン操作を経る必要があること。これでは逆に、PM達の不満をかき立てる結果になりかねない。さてどうするか?

「対象人数を絞ってパイロット・テストをやって、そこでの反応を見てから進め方を決めたいと思うんだけど、どうかしら?」

それは実に慎重なアプローチだね、と賛成し、さっそくサンディエゴ支社環境部門のPM26名をリストアップします。

「この人たちは全員、僕が日常的に会話している相手だから、きっとメールに書きにくいような本音でも直接聞き出せると思うよ。」

このちょっとした気遣いに感謝の言葉を述べた後、

「会社が契約しているITコンサルタントにこのテストを頼めることになったから、さっそく彼にリストを送るわね。」

と喜ぶパット。そして月曜日の早朝、一斉メールが送られたのをスマホで確認しました。文面の最後には、「パットとシンスケに宛ててこのメールサービスに対する意見を送って下さい。」とあります。あて名は全てBCCなので、受取人が誰をこの時点では確認出来ませんでした。

その約30分後、オレンジ支社のクリスというPMから、こんなメールが届きます。

「あんたの名前は初耳だ。誤解だったら申し訳ないが、この手の不審メールに貼られたリンクを気軽にクリックするほど俺は馬鹿じゃないからな。」

よく見ると、クリスの返信はマティアスという人に宛てられ、パットと私の名前がCCに入っています。さっそくパットにテキスト。

「メールの出所が疑われちゃってるよ。なんでこんなことになったのかな?」

「仕事を任せたITコンサルタントのマティアスが、自分の会社のメールアドレスから発信しちゃったのよ。困ったわね。これじゃ、フィッシングメールと思われても仕方ないわ。」

「それにこのオレンジ支社のクリスって、僕のリストには入ってない名前だよ。どうして彼がメールを受け取ったんだろう?」

「え?そうなの?今回使われた送信先リストをマティアスに送ってもらうわね。」

そしてこの五分後、不信感を表明する同様のメールがシアトルやホノルルのPMから届きます。

「ねえパット、どうやら僕の作った26名のテスター・リストはどこかに消えちゃったみたいだよ。一体マティアスは、誰宛てに送信したのかな?」

すると暫くして、当のマティアスから今回の宛名リストが送られて来ました。ファイルを開いてみて、愕然とします。

「パット、このリストは北米西部にいる環境部門のPM全員だよ。400人以上の名前が載ってる!」

“Holy shit(なんてこと)!”

動揺を隠せない様子のパットが、こう続けます。

“Is this a Houston we have a problem –level issue?”
「これって、ヒューストン、問題発生!ってレベルのピンチかしら?」

「いやいや、そこまではいかないと思うよ。逆に、調査対象が広がったことでフィードバックが増えるかもしれないじゃない。」

と、冷静さを装ってパットをなだめる私でした。

“Houston, we have a problem.”というのは、アメリカ人の多くがジョークに使う引用句です。これはかつてアポロ13号が月に向かって航行中、機体の一部で爆発が起こり絶体絶命のピンチに陥った際、テキサス州ヒューストンの管制センターに向けて発した飛行士ジャック・スワイガートの第一声。この交信時点ではまだ問題の全容が不明で、爆発の衝撃とそれに続く警報サインにスワイガートが反応した形。事態はここから悪化の一途を辿り、電力や水の致命的不足等の苦難が次々に襲いかかります。一瞬の油断が命取りになる緊張感の中、知恵と体力を振り絞り、間一髪で地球への帰還を果たす飛行士たち。

今回あらためて調べてみて分かったのですが、このセリフ、オリジナルとは微妙にニュアンスが変わっています。

“Houston, we have a problem.”
「ヒューストン(管制センター)、問題発生。」

はいかにも緊急事態が進行中という感じですが、実際は、

“Okey, Houston, we’ve had a problem here.”
「オッケー、ヒューストン、(ちょっと前に)何か問題が起きた模様。」

と現在完了形が使われていて、やや呑気な語感。人類の宇宙飛行史の分岐点とも言えるこの世紀の大ピンチを象徴するセリフとしては、いささか緊迫感に欠けています。それを補おうと思ったのか、1974年にユニバーサル・テレビが手掛けたドラマチックなタッチのテレビ映画タイトルに使われたのが、「Houston, we have a problem. (ヒューストン、問題発生!)」でした。それ以来、こっちのフレーズが世に広く知られるようになってしまった、というお話。

日本で暮らしていた頃、立花隆がメインを務めた「アポロ13号奇跡の生還ドキュメンタリー」を観ました。番組中、立花氏が繰り返していたのが、船長のラベル、飛行士のスワイガートとヘイズは、極めて明るい性格だったということ。常人なら「もはやこれまで」と早々に諦めてしまうほどのハイペースで畳みかけて来るピンチを、ひとつひとつ落ち着いて切り抜けて行く。何千人という管制センターのサポートがあったとは言え、飛行士たちのあの陽気さがなかったらこの奇跡は起きなかっただろう、と。

「泣いたって喚いたって救助隊が駆けつけてくれるわけじゃない。やれることをこつこつやるしかないだろ?」

みたいなことを、後日のインタビューで船長のラベルが満面の笑顔で答えていたのが今でも強く印象に残っています。NASAで何年間もの過酷な訓練を経験した宇宙飛行士たち。その精鋭中の精鋭が、ずば抜けて強靭な精神力を備えているのは納得です。でもそういう人達が、ここまでネアカタイプだというのは意外でした。あの「元気があれば何でも出来る」アントニオ猪木氏の名言にも、こんなのがあります。

「ピンチっていうのはね、ひとつのものじゃなくて、いろんなヤッカイ事が“ダマ”になってやってくる。だからみんな負けちゃうんです。その“ダマ”をひとつずつ解きほぐして、ひとつずつやっつけていけば、ピンチってのは必ず乗り切れる!」

傍から見れば絶体絶命のピンチでも鮮やかに切り抜けてしまうこういう人たちのキャラクターは、ドラマの題材に使われる際、感動に飢えた観衆に合わせてつい「超人化」されてしまいがち。だからこそ、「ヒューストン、問題発生!」などという緊張感たっぷりのセリフが創作されてしまったのでしょう。でも実際は、ただただ辛抱強く問題を解決し続けているだけなのかもしれません。

さて、話はコストレポートのパイロットテストに戻ります。月曜日は一時的なお天気雨のようだったPM達からのメールが、火曜から次第に土砂降りの勢いでインボックスを埋め始めました。400名以上のPMに意見を求めたのですから、当然の結果でしょう。パットと手分けして返信を書き始めたのですが、翌日の午後から強烈な頭痛に見舞われ7日連続寝込んでしまった私は、メールを読むために目を開けることも出来ない「ブラックアウト」状態に突入。これでパットは、すっかり孤立無援となってしまいました。

体調が回復して一週間ぶりに出勤してみると、なんと彼女は百通近いメールにそれぞれ、目を疑うほど丁寧な返信をしていたのです。標準的な文章をコピペしてスピーディーに処理してしまおうとなどという姑息な発想は持ち合わせていないようで、一人一人の声に真摯に耳を傾け、心からの感謝を述べた後、その意見に対して自分はこれからどうするつもりかを具体的に説明している。ただでさえ超多忙な人なのに、個人個人とガッチリ向き合って対話しているのです。大きな負荷をかけてしまったことを申し訳なく思いつつも、彼女のこの丁寧な仕事ぶりにすっかり感心してしまった私でした。

「復帰おめでそう。今ちょっと話せる?」

と私の存在をシステムで確認したパットから、さっそくテキストが入ります。今回のテストで、約七割の人が自動送信メールのアイディアを好意的に受け入れている一方、残りの三割は拒絶反応を示している。こんなもの何の役にも立たない、と。フィードバックを読んでみて分かったのだが、このレポートを誰もが有効に使えるようになるためにはある程度の補足ガイダンスが必要だ、ということ。

「回答者の中に、レポート活用のための簡単なウェブトレーニングをやってもいいよって名乗り出てくれた人が複数いるの。アレックスって知ってる?彼と話してみて、任せられるなって思ったの。明日の朝、彼と作戦会議の予定があるんだけど、参加出来る?」

「もちろん喜んで!アレックスはうちのオフィスの凄腕PMだよ。彼ならきっと良いトレーニングをやってくれる。」

「私には優秀な人を見分ける才能があるの。それで、相手の方から協力させて欲しいと言うまで腕を捩じ上げちゃうのよ(twist their arms)。」

そして、

“sound familiar? LOL”
「よく知ってるわよね。笑笑。」

と締めくくります。私はここで、彼女の誠意に満ちた返信の数々を思い返し、賛辞を送らずにはいられませんでした。自分の意見をしっかり聞いてくれる人の力になりたいと思うのが人情というもので、あの心籠る文面は、きっと相手の心を揺り動かしたと思う、と。

「そうされた方は、きっと捩じ上げられた腕の痛みなんて全然感じてないね。魔法にかかったようにハイな気分になって、協力を申し出るんだと思う。我が社のリーダー達が全員、あなたのような才能を持った人なら良かったのに。」

「あら、有難う。」

「送信先リストの件では随分焦ったけど、結局はそれを逆手に取って良い結果を出しちゃったね。」

「本当に笑っちゃうわね!あの時は正直、すっごく不安になったのよ。」

「ヒューストンまで持ち出したもんね。」

からかうような調子でそう書いたところ、暫く返事が滞ります。それから一言、

「ヒューストン?」

と首を傾げている様子の返信。え?この人、自分の使用した引用句を忘れちゃってるみたいだぞ…。」

「ほら、『これってヒューストン、問題発生ってレベルのピンチかしら』って言ってたじゃん。」

と私。

「あら、そうだったわね!lmao

ん?なんだ最後の四文字は?すぐにネットで検索したところ、これはLaugh My Ass Offの略で、「お尻が抜けて落ちるほど激しく笑っちゃう」という意味でした。

ずば抜けて優秀な人って底抜けに明るいよね、というお話でした。


2017年12月10日日曜日

PTO ピーティーオー

先週水曜の出勤直後。背中にゾクっと悪寒が走りました。あ、ヤバいぞこれは…。かなり深刻なヤツだ。暫くして再びゾクり、そしてまたゾクリ。う~む。大至急早退してベッドに潜り込むべきレベルの発熱予告じゃないか。しかし午後一番でホノルル支社の社員を対象にウェブを使ったトレーニングを予定しており、しかも既に二度のスケジュール変更を経ていたため、ここで更にドタキャンするのは気が引ける。「早く帰った方がいい」という部下のシャノンやカンチーの声を制し、何とか3時まで乗り切ってから早退しようと決めたのが運の尽きでした。

帰宅早々、強烈な頭痛と下痢がスタート。目の奥の疝痛があまりにも厳しく、三秒とまぶたを開けていられない状態がそれから5日間続きます。食欲はゼロ、テレビもスマホも見たくない。更にはわずかな音も臭いも神経に障るので、寝室の扉を閉めてもらって全てのブラインドを下ろし、妻のマッサージとポカリスウェットで何とか生き延びます。ようやくおかゆを食べられるようになっても症状はほとんど改善せず、夜中に何度も猛烈な頭痛で目が覚めます。枕の位置や高さも変えてみたのですが、一向に変化が見られません。これだけ長期間大人しく寝てるっていうのに、どうして頭が痛くなるんだよ!とさすがに自分の身体に対して腹が立ってきました。これはきっと頸椎が歪んでるか何かが原因で、物理的な治療が必要に違いない、と意を決した私は、妻に頼んでBody Craftの川尻先生に予約を取ってもらいました。

この先生は私の駆け込み寺的存在であり、事実上の主治医です。鍼灸やカイロ、フィジカルトレーニングも含めてトータルな肉体のケアをして下さる。特に「痛み」の対処に関しては絶対の信頼を置いていて、どんなに深刻な腰痛であれ胃痛であれ、クスリも使わず鮮やかに消し去ってしまうというマジックを無数に体験して来ました。

「おそらくウィルスに感染しまして、過去5日間ずっと寝てました。下痢は治まって来たんですが、夜中に何度も頭痛で目が覚めちゃいまして。頭痛薬は全く効果なし。きっと頸椎が歪んでいるんだと思うんです。長く寝てる間にずれちゃったんですかね。」

と、首をさすりつつ自己流の診断を披露する私。

「いや、頸椎じゃないですね。」

私の首や肩に触れようともせず、患者の勝手な自己診断をあっさり撥ねつける川尻先生。私を横にならせ、微弱電流を身体に流しつつ、両手の親指と人差し指の股当たりにハリを打ち込みます。一時間の治療後、痛みが驚異的に和らいだのを実感してから、そもそもの原因は何だったのか、という謎解きに入りました。

「ま、簡単に言えば、脳が悲鳴を上げたんですね。」

「へっ?」

働き詰めに働いて、大量の情報が脳に殺到し続けて来た。だいぶ以前から、「頼むからスローダウンしてくれよ」という内なるメッセージを何度も受け取っていたはずなのに、それを無視してエンジン全開で突っ走って来た。もうさすがに限界だ、と音を上げた脳が「システム強制終了」を断行した、というわけ。横になって寝ているのに頭痛がおさまらないのは、自律神経が失調して睡眠中に横隔膜を上下できなくなっているためで、肺呼吸を助けようと首や肩の筋肉が緊急出動し、その緊張が頭痛を引き起こしているのだ。

「人生の優先順位を真剣に見直す必要がありますね。まずはとにかくボ~っとして下さい。」

これが、川尻先生の結論でした。

ウィルスや枕の高さは無関係。私の生き方こそが問題なのだ。これはショックでした。仕事は趣味に等しく、ストレス・ゼロの毎日を過ごしてると公言して来たけど、要はそうやって自分を欺いていただけのこと。本当はずっと以前からメーターが振り切っていた。意識して脳のスイッチを「オフ」にすることで副交感神経の活動を促し、肉体自体の制御能力を取り戻さないとヤバいことになる。だから今は、とにかくボ~っとするべし。

う~ん、ボ~っとねえ。…でも一体どうやって?やり方が分からんぞ…。手っ取り早く考えられるのは、休みを取ること。これまで、部下たちが心配げに「PTO取ったらどうですか?」と忠告して来たことは、一度や二度じゃありません(PTOというのはPaid Time Off、つまり有給休暇のこと)。毎週加算されて行くばかりで一向に消化しないため、遂に会社規定の「頭打ち」レベルに達してしまいました。日数にして約40日間。これ以上はもう増えません。本当は増えるはずの休みをみすみす無駄にするのは悔しいから、毎週金曜にPTOを一日分申請し、一応お休みの態で「のんびり働く」ことにしたよ、と言うと、若手のアンドリューが “You’re crazy.”(頭おかしいよ)とやや気色ばんで毒づきました。これには一瞬ムカッとしましたが、冷静に考えれば上司を気遣う部下として、当然の発言でしょう。

更には、同僚達とのディナーにたまたま参加した妻と息子が、私がPTOをたんまり貯め込んでいる事実を初めて知らされ、以来ことあるごとに、

「ピーティーオー!ピーティーオー!」

とデモ隊のシュプレヒコールさらながらに二人で有給消化を訴えるようになったのですが、それでも態度を改めようとしなかった私。

Body Craftから帰宅後、ダイニングの窓際に椅子を移動し、庭をぼんやり見つめながら、今までの自分を振り返ってみました。そしてゆっくりと、「もしかしたら、これまでの働き方は異常だったのかもしれない」と慎重に自己批判を始めました。僕は本当の意味で、人生を楽しんでいると言えるだろうか?PTOも取らずに仕事に打ち込む。楽しい楽しいと自分に言い聞かせる。大至急頼む、と就業時間外に助けを求められれば余計に燃えてサービス残業に励む。挙句の果てに、肉体が悲鳴を上げて全面ストライキを決行する。こんな人間が、息子に対して、そして部下たちに対して、果たして良いロールモデルと言えるだろうか? いや、駄目だ。直ちに方針転換しなければならない。さっそく行動開始だ!

翌朝8時半頃、妻の運転で息子を高校まで送った後、ラホヤの海岸沿いにある崖際の遊歩道の途中で降ろしてもらいました。いい風を吸って景色を楽しみつつ散歩する、それが目的でした。ところが歩き始めて間もなく、大腿筋と背筋が著しく萎えていることを悟り、たちまち疲労感に襲われます。大型のベンチに腰掛け、上体をねじって背もたれに右腕を掛け、ふと水平線に目をやって息を呑みました。

数時間前から無風状態が続いていたのか、朝の海はまるで巨大な盥に張った水のように静まり返っています。遥か遠くに船影が一隻認められるのみで、白波ひとつ立っていない。私の正面には大きくてまん丸い昼の月が、まるで浮力を使って水から飛び出して来ましたと言いたげに、青空の底にペタリと貼りついている。月面に描かれた灰色ウサギの模様をじっと見つめているうちに、小ぶりな赤い花をつけた遊歩道沿いの灌木に集う小鳥たちのさえずりが、徐々にボリュームアップして来ました。

この瞬間、「ボ~っとする」のがどういうことなのか、生まれて初めて理解出来たような気がしました。何もせず、ただただ水平線を眺め続ける。これ以上にボ~っとした行為があるだろうか?海と空とを十分ほど見つめた後、立ち上がってゆっくりと崖沿いの道を降り始めました。暫くするとさっと視界が開け、お気に入りのCaroline’s Café(キャロラインズ・カフェ)へ到着。平日の朝だけあって客足は鈍く、がらんとした店の一番奥に陣取って、カフェオレを味わいつつ妻を待ちます。

凪いだ海をガラス越しに30分程見つめていると、妻が友人とのウォーキングを終えて現れました。

「ねえ、カフェオレとカフェラテと、カプチーノの違い、知ってた?」

カウンターのところに説明書きがあったのよ、と彼女。

カフェオレは普通のコーヒーに温めたミルクを加えたもの。
カフェラテは、エスプレッソに温めたミルクを加えたもの。
カプチーノは、エスプレッソに泡状のミルクを加えたもの。

へえ、そういう定義だったのか。そいつは知らなかったな。

「これカフェラテ。飲んでみて。」

彼女の差し出したカップからすすった飲み物は、目の覚めるような美味さ。私の注文したカフェオレとは、似ても似つかぬ深みです。

「本当だ。全然味が違う。僕もカフェラテにすれば良かったな。」

昔からコーヒー好きだった私は、かつて銀座や原宿、表参道などで、カフェを訪ね歩くのが趣味でした。それが今では、会社のキッチンで魔法瓶入りの無料コーヒーを日に五回ほどマグカップに注ぎ、何の感動も伴わずに胃へ流し込んでいる。この殺伐とした「気づき」に、何か目の覚めるような思いがしました。

ボクハ、ジンセイヲタノシンデナイ。

極上のカフェラテを飲み終えて二人キャロライン・カフェを出ると、その足で旅行代理店の「3D’s Travel」へ向かいます。過去数ケ月検討を続けて来たのですが、3月最終週から4月第一週にかけて家族で一時帰国することをいよいよ最終決定したのです。そしてサンディエゴ・成田間の航空券を購入。これで、晴れてPTO12日間分の使用が決定です。

木曜日、一週間ぶりに出勤した私は、部下たちに宣言しました。

「これからはスローダウンして、人生楽しむことにした。仕事の割り振りが前よりキツくなるかもしれないけど、みんな協力頼むぜ。」

シャノンもカンチーもアンドリューもテイラーも、「もちろん!どんどん振って下さい」と、皆でこれを歓迎してくれました。ちょっとじわっと来ました。

この週末には、Nespressoのエスプレッソマシーンをネットで注文しました。早朝、明けて行く空を見ながらカフェラテを手に本を読む。これが私の描く、新しいライフスタイルの一部です。

よ~し、お楽しみはこれからだ!


2017年11月24日金曜日

Idiot Savant イディオット・サヴァン

「最近どうしてるの?」

「今はダラスにいるの。来週はサンディエゴに戻ってるから、ランチ行かない?」

先週後半に交わした、同僚マリアとのテキスト・メッセージです。え?なんでテキサスに?

月曜の昼前、ビルの一階ロビーで待ち合わせ、近所のスイーツ系レストランExtraordinary(エクストラオーディナリー)へ。

「どこまで話したっけ?」

歩き始めるや否や、勢い込んで近況報告を始めるマリア。所属部署の解体決定で解雇を予告されたが、ボスのエドが奔走した結果、ロスのR氏に当面の居場所を約束してもらった。エドとエリカは別の落ち着き先が決まっている、というところで話が終わっていました。

「それで、その後どうなったの?」

なんと、当のR氏がどんなに連絡しても返事をくれず、いよいよ万事休すとなった折、エドとエリカが異動する予定の新組織のトップ、アルバートから “Potential Position(求人の可能性あり)というタイトルでメールが届きます。翌日からダラスで会議があるので合流せよ、とのこと。

「それだけ?」

「そうなのよ。約束めいたことは何も書かれてないの。」

レストランに到着して着席し、彼女はBLTサンドイッチ、私はポルタベッラ・パニーニを注文します。

「朝一番の飛行機でダラス支社に駆けつけたの。遅れたらどうしようって不安で、前の晩は眠れなかった。それから二日間、緊張でほとんど寝つけなかったわ。最終日は頭痛と吐き気でもう死にそうだった。」

「で、どんな仕事だって?」

「そこなのよ!」

一人で何足もの草鞋を履くアルバートは、北米のリスク・マネジメントの他、南米エリアの組織づくりも担当している。ブラジルやアルゼンチン、コロンビアなどの国々で展開するプロジェクトのコントロールが課題なのだが、今のところたった一人でこれに当たっている。遅れているIT環境の整備や人事管理のシステムづくりが喫緊の課題なのだが、本社のサポート態勢は不充分で動きが鈍く、なかなか前に進まない。

「なんかイライラした口調で、そういうことをただただ喋るのよ。あれもやらなくちゃいけない、これもやらなくちゃいけないって。だ・か・らぁ、私の仕事はあるんですかぁ?って何度も聞きそうになったわ。」

「そういう背景をしっかり知らせた上で、俺の補佐をしてくれって言おうとしてたんじゃないの?」

マリアと話している最中も、ひっきりなしに携帯のバイブレーションが作動し、幾度となく席を外すアルバート。己の多忙さをイヤというほどマリアに見せつけた後、震えるスマホの液晶画面に目をやった彼が、

「この電話は一緒に出てくれ。」

とスピーカーフォンをオンにします。そして、コロンビアの重役とスペイン語で会話をスタート。

「それまで一度たりとも、私のスペイン語能力を確認しようともしなかったのよ。かなり大事なポイントのはずでしょ?そもそもスペイン語が出来なかったら南米の仕事なんて無理なんだから。何で聞かないのかしらってずっと思ってた。」

電話の相手は猛烈な早口の巻き舌で、しかも話題がワープを繰り返すために発言の意図を理解するのが困難なタイプだったそうです。集中力を高めて電話に耳を近づけ、落ち着いて受け答えしているうちに、「あ、これはテストなんだ!」と気づいたマリア。語学の能力レベルを本人に尋ねるのではなく、いきなり実戦に送り込んで様子を見る。考えてみれば、これが一番確実な実力診断です。

そうしてつつがなく電話会議を終え、この試験にパスしたことを確信したマリア。ところが、その後どんなに待っても肝心のポジションに関する説明がありません。え?仕事くれるんじゃなかったの?と一層困惑する彼女。そしてそのまま会議は終了時刻を迎えます。

「そうだ。パスポートは更新してるか?」

別れ際、思い出したように尋ねるアルバート。最近更新したばかりだ、と答えるマリア。

「ブラジルのビザ(査証)はあるか?」

そんなもの、あるわけないじゃん。

「ロスのブラジル領事館へ行ってビザ取っとけ。」

「おおっ!それはもう当確でしょ!」と私。

「でしょ。私もそう思いたいところだったけど、ポジションの名前も具体的な職務内容も、結局一切説明無しだったのよ。」

なるほど。それは確かに不安だな…。

「アルバートとの打ち合わせが終わった後、人事と電話会議があったの。」

職を解かれる際の、エグジット・インタビュー(離職時面接)です。社員が辞職する際に執り行われる面接ですが、「部署解体による一斉解雇」という今回みたいな特殊ケースでもやるんだな、というのがオドロキでした。

「これまでの長年の貢献に感謝します、なんていうお決まりの儀式の後、何か質問はありますか?って人事の担当者が言うから、来週からタイムシートにどのコードを記録すればいいんですか?って思い切って聞いてみたのよ。この時点では、まだ本当に先が見えてなかったの。」

確かに、アルバートから正式オファーを受けたわけじゃないので、何言ってるの?タイムシートの心配なんか無用でしょ、あなたは解雇されたのよって苦笑されてもおかしくない場面です。

「南米地域部門のチャージ・コードを、メールで送りますね。」

という回答を聞いた時、思わず拳を握り締めて「イエス!」って心の中で叫んだわよ、というマリア。

「やったね!これで間違いなく正式決定じゃん!」

「有難う。ようやく普通に呼吸出来るようになったわ。」

食事が終わって精算の段になり、

「ここは僕のおごりだよ。」

と請求書が載せられたトレイを掴むと、え?なんで?と純粋に不審な表情を浮かべるマリア。

「だってお祝いでしょ。」

「あ、そうか!」

「君のこと、結構心配してたんだぜ。ほんとに良かったよ!」

いつもあっけらかんとして、どんな苦境も「蛙の面に水」とやり過ごすタイプの彼女が、緊張で「死にそうに」なっていたなんて想像がつきません。なんだか愛おしくなりました。

それにしても、彼女の上司になるアルバートの曲者ぶりはなかなかのものです。彼のスケジュールは数週間先まで隙間なく埋められていて、常に複数の仕事を同時にこなしている。恐らく相当な切れ者なのだろうが、コミュニケーション能力に関してはとても褒められたもんじゃない。なすべきことは瞬時に判断出来るものの、それを実行に移す段取りになるとてんで役に立たない。

“He’s an idiot savant.”
「彼はイディオット・サヴァンよ。」

え?なんて言ったの?と聞き返す私。イディオットが「馬鹿、まぬけ」なのは分かります。問題はサヴァン。初耳の単語です。

「特殊分野には滅茶苦茶秀でてるんだけど、一般人が当たり前に出来るようなことがまるで駄目、ってタイプなのよ。」

彼女がスマホを取り出して検索したところ、これは映画「レインマン」に出て来た自閉症患者に顕著な傾向で、電話帳をまるまる一冊暗記出来るなど特殊な才能を持つ知的障害者のこと、と書いてありました。

「う~ん。この説明の通りだとしたら、アルバートにはぴったり当てはまらないかも。でもとにかく、彼は普通じゃないのよ。」

彼女が言いたかったのは、こういうことですね。

“He’s an idiot savant.”
「あれは紙一重の天才なのよ。」

会議の後半でようやくつかめて来たのは、彼が必要としているのは指示待ち人間でなく、問題を察知して勝手に動き、自分でさっさと解決してくれるアシスタントなのだ、と。

「今まではエドやエリカに何でも相談して来たけど、これからは私ひとりで解決策を考えなきゃならないわ。大変だけど、そうと分かればかえって気が楽よ。」

アルバートから救いの手が差し伸べられるのを待っていたけど、実は彼の方が助けを必要としていた。もともと彼女は極めて独立心旺盛な人なので、こうして暴れ回る自由を与えられたことで、その実力を存分に発揮できるかもしれません。

オフィスのビルに戻り、レストランに近い通用口から電子キーを使って入りました。右へ行くと私の階、左にはマリアの階用のエレベーターホールがあります。じゃあね、と言ってマリアが歩き始め、またすぐに立ち止まって振り返りました。

「ランチありがとね!」

「どういたしまして。本当におめでとう!」

と手を振る私。すると彼女は、右手の指を全部ぴんと伸ばして唇につけた後、「ん~んまっ!」と言いながら投げキッスをくれました。

デスクへ戻って仕事を再開し、暫くして同僚クリスティーのところへ行きました。

「イディオット・サヴァンって、どんな人のこと?同僚や上司のことをそう表現するのは不適切?」

すると彼女は、映画「レインマン」の例を持ち出し、ネットに出ていたのと同じ説明をしてくれました。Savant(サヴァン)は頭の良い人のことを指すけど、Idiot(イディオット)で引っ掛かる人はいると思うから、不用意に使うと怒られるかもしれない。

「でもね、ここで働く人のほとんどが、実際かなりの程度イディオット・サヴァンだと思うわよ。私なんて、数字になるとからっきし駄目だもん。」

彼女は重要なプロジェクトを十数件担当しており、その分野では広く知られた凄腕です。しかし財務の話になると、途端にポカンとしてしまうのです。だからこそ、我々のような専門家の助けが必要になるのですね。

イディオット・サヴァンとアシスタント。博士と助手。ボケとツッコミ。そうだ、いいコンビが組めて初めて、世界はうまく回り出す。頑張れマリア、未来は明るいぞ!


2017年11月18日土曜日

Validation Junkies バリデーション・ジャンキーズ

先週金曜の朝、上階で働く同僚リタが下りて来て、私の近くに座るベスと、声を押し殺してひとしきり話し込んでいました。リタが去って暫くすると、ベスが私の席まで来て封筒を手渡します。

「ジャックのフェアウェル・カードよ。一言書いてくれたら次の人に回すから。」

「え?どのジャック?」

まさかと思いましたが、日系アメリカ人の同僚ジャックがこの日で会社を去ると言うのです。二日前に彼とランチルームで世間話を交わした時は、そんなこと匂わせもしなかったのに。これはきっと我が社のお家芸、サプライズ・レイオフに違いないと思いつつ、既にギッシリと同僚達のメッセージで埋め尽くされたカードの裏に、ジャックに対するこれまでの感謝を綴りました。

一昨日、同僚リチャードに上階で会った際、経緯を聞いてみました。

「最近、マネジメント層が転職組にごっそり交代したでしょ。彼等が組織図を見直して、深く考えずに彼の解雇を決めたんだと思うよ。」

木曜の朝いきなり「明日中に会社を去れ」と通告され、さすがのジャックも落胆を隠せなかったそうです。長きに渡って非常勤扱いだったとは言え、その豊富な人脈を活かしサンディエゴ地域のプロジェクト獲得に多大な貢献をして来た人物。それをこうもあっさり切り捨てるなんてね、と二人で首を振り振り溜息をつきました。

「でもさ、なんだかんだ言っても88歳という超高齢で現役を続けていたこと自体が、奇跡と考えて然るべきなんだよね。」

と私が本音を漏らすと、リチャードも笑って同意し、

「近いうちにまたいつものメンバーで食事会を開いて、彼を招待しようぜ。」

と提案しました。

席に戻って暫くすると、リチャードが口にした “He was disappointed.” (彼はがっかりしてた)というフレーズが気になり始めました。通常の引退年齢を遥かに超えて活躍していたジャック。自分から辞職を言い出さない限り、こういう日を迎えることが不可避であるのは重々分かっていたはずです。そんな彼でもやっぱり、突如解雇通告を受ければショックなんだなあ。せめて、これまでの功績を称えるささやかなセレモニーでもやってあげたら良かったのに…。

さて昨日は、先頃マイルストーン達成を祝った環境系巨大プロジェクトのレビュー会議がありました。去年までPMを務めていたセシリアが出世に伴ってプロジェクト・ディレクターへ昇格し、サブに回っていた私がPMの座に戻ることになったこのプロジェクト。四半期ごとに、30分のレビューを受けるのがお決まりです。いつも通り資料を準備していたところ、水曜の午後になって財務部のジョンから、「今回のレビューにはたっぷり一時間かけたい」というリクエストが入り、さらには追加資料の要望まで。これにはセシリアが苛立ちを露わにし、

「二日後の会議のための資料を、どうして今になって増やして来るのよ!」

他にも多数プロジェクトを抱え、家では二児の母である彼女。常に分刻みで過密スケジュールをこなしています。この気まぐれな要求変更に対する憎悪の激しさは、そばにいるこっちが委縮してしまうほどでした。一方私は日本の超ブラックな労働環境に身を置いた経験からか、こういう事態にはすっかり免疫が出来ていて、「ハイハイ大丈夫ですよ、喜んで!」と笑顔アンド揉み手で取り掛かります。ひとしきり悪態をついた後、腹を決めたセシリアは深夜と早朝に自宅で作業。私の成果品と合わせ、全資料が会議の二時間前に整います。そして参加予定者全員に、一斉送信。

レビュー本番、会議室にセシリア、そして大ボスのテリーと三人座ってスピーカーホンのスイッチオン。資料を壁の液晶画面に映し出します。環境部門ナンバー2のジェームス、会計部門のジョスリンが続けて電話会議空間に現れ、少し遅れて財務部のジョンが登場。セシリアとの苛烈な舌戦を予期し、ごくりと唾を呑み込む私。

「会議を始める前にまず言っておきたいんだが。」

と、ジョンが口火を切ります。

「今回のマイルストーン達成を成し遂げたプロジェクトチームに対して、その労を労いたい。おめでとう。」

するとジェームスも、

「本当にこれは快挙だよ。有難う。特にセシリアとシンスケは、本当によくやってくれた。」

と同調します。おいおい何なんだこれ?サプライズ・パーティーか?大ボスのテリーも、

「うちのチームはエース級揃いだもの!セシリアのリーダーシップは抜群だし、シンスケの完璧なプロジェクト・コントロールがあったからこその成果よ。」

とべた褒め。セシリアも思わず相好を崩し、

「有難う。素晴らしいチームで働けてラッキーだと思ってるわ。財務部やマネジメントからのサポートも重要なファクターだった。」

と謙遜します。そんな感じでスタートしたせいか、その後はずっと建設的な討論が続きます。

「オポチュニティ・レジスターにこの項目も加えたらどうだろう?」

「それは良いアイディアだわ!さっそく追加して更新ファイルを送るわね。」

「三か月後のレビュー会議でこのリスク・アイテムを見直して、状況が改善していればその際にこのコンティンジェンシーのリリースを検討しよう。」

「それじゃあこの項目をマークしておきましょう。」

お互いにリスペクトを表明しながら話をすると、会議ってこんなにもポジティブになるんだなあ。電話を切った後も、なんだかフワフワしていた私。大ボスのテリーが、

「随分と予想外の展開になったわね。」

と総括。会議参加者が揃ってちょっぴりハイになっていたことを、三人で確認し合います。そもそも、人の神経を逆撫ですることで有名なあのジョンが、冒頭で真っ先に褒め言葉を述べたからこうなったんだよね。と私。でもこういうの、案外悪くないわね、とセシリアが微笑んだ後、テリーが笑ってこう締め括りました。

“We all are validation junkies.”
「誰でもみんな、バリデーション・ジャンキーなのよ。」

ん?なんだそのフレーズ?何となくの意味は分かったけど、後で席に戻ってあらためて調べてみました。

Validation(バリデーション)というのは、「有効性や妥当性の確認」、Junkie(ジャンキー)は「(麻薬の)常習者」なので、テリーの発言を意訳するとこんな感じでしょうか。

“We all are validation junkies.”
「誰でもみんな、褒められたい病なのよ。」

昨今目にするマネジメントやリーダーシップ系の文献には、「褒めて伸ばす」タイプの論調がはびこっています。ジョンもジェームスも、最近その手の研修を受けて来たばかりなのかもしれない、と勘繰る私。グループで口ぐちに相手を褒め合う時間を経験してみて分かったことですが、これが意外と居心地悪いのです。日本にいた頃、親や上司から褒められた記憶がほとんど無い私は、「褒め言葉シャワー」の圧にうまく対応出来ないみたい。これって最近のアメリカ全体の流行りなのかもしれないな、と思うのは、うちの息子も時々、「全然褒めてくれないよね」と不平を漏らすから。ふざけんな、褒められるほどのことが出来てるとでも思ってんのか!とどやすのはダメで、良いところを見つけて伸ばしてやるのがグッド。きっとそういう教育が当たり前になっているのですね。う~む。でもどうなんだろ?僕にはやっぱり、何だかちょっとキモチワルイ…。なかなか認めてもらえない境遇に奮起して成長を遂げる、という方がしっくり来るんだよなあ。

その晩の夕食後、今や日課になっているギターの練習に取り掛かります。ふと思い立ち、妻が昔から大ファンであるブライアン・アダムズの曲を弾いてみることにしました。Heaven とかEverything I doとかに挑んでたちまち挫折した後、名曲Summer of 69の印象的なイントロを練習。左手の指の動きがスムーズにいかず、30分ほど四苦八苦した後、何とか聞ける程度にまで仕上げます。携帯画面で検索した歌詞をあらためて読んでみて、最初の数小節がなかなかグッと来ることに気付きました。こいつはしっかり練習して、歌もギターも絶対モノにするぞ、とピックをつまむ指先に力が入ります。

I got my first real six string
初めてのリアルな六弦(ギター)

Bought it at the Five and Dime
ファイブアンドダイムで買ったんだ

Played it till my fingers bled
指から血が出るまで弾いたのさ

う~ん、いいねえこれ。今の自分にもちょっとだけ重なるし…。しどろもどろながら歌詞をなぞって唸り始めた私を制し、妻がこう言いました。

「あ、歌はいいから。ギターだけ練習してくれる?」

大好きなブライアンのボーカルが頭の中に流れてるので、余計な声を出さないでくれ、とのこと。

うん、そうだよね。そう来るよね。…そう来なくっちゃ!