2014年6月8日日曜日

Run the gauntlet 袋叩きに合う

先日、12歳の息子が珍しくクラスメートの悪口を言い始めました。段々興奮が募って来たようで、しまいにはヤクザみたいな口調になって来ました(とてもここでは書けませんが)。これはまずいと思い、言霊思想まで持ち出して戒める私。悪口を言う時って、つい調子に乗って大袈裟になりがちです。冷静に考えればひとつの個性に過ぎない要素ですら、悪意のメガネを通して拡大してしまう。息子に諭しつつも、大人だってよくやっちゃうんだけどね、と苦笑い。

さてここ数週間、オンラインPMツールの使い方をプロジェクトマネジャー達に教えて回っています。トレーニング講師の仕事を大好物とする私にとって、実に楽しい時間です。問題があるとすれば、トレーニングを受ける側からの反発。ここ数年レイオフの嵐が吹き荒れ、PM一人当たりの仕事量が激増しているにもかかわらず、マネジメントツールが続々と追加されている。「またかよ、もう勘弁してくれよ。」と誰もが辟易しているのですね。

かつてはのびのびと仕事していたPM達も、上層部が押し付けて来る非現実的な経営目標に何とか応えようと、青息吐息。技術屋の真骨頂を発揮するより、「一日でも早く代金を支払ってもらえるようクライアントと掛け合う」ことの方が優先されるような社風に変わってしまった結果、経営ツールの追加は更なる締め付けの強化とみなすPMがほとんどなのです。そんなわけで、新しいツールの使用法を教える時は極めて明解に、「これであなたの仕事が楽になりますよ」というメッセージを強調するよう努めています。

先日のロングビーチ支社でのトレーニング中も、この支社で働く技術屋のマークがちょくちょく茶々を入れて来ました。彼は、日頃から会社の提供するマネジメント・ツールの撤廃を声高に叫んでいる不満分子。少しでも込み入った使い方を紹介すると、「こんな役立たずのシステムはゴミ箱に捨てるべきなんだよ!」と鬼の首を獲ったように抗議するマーク。

その日の朝、彼の仕事を少し手伝いました。前の週にクライアントから承認された追加予算をオンラインシステムに足しこもうとしていたのですが、タスクへの振り分けが複雑で、頭がこんがらがってしまったのだそうです。彼のプロジェクトはただでさえ利益率が低く、財務部門からの厳しい質問が集中しがち。ちょっとでも数字を間違えようものなら、即座に文句が飛んで来るのだと言います。そうかなあ。被害妄想が過ぎるような気がするんだけど…。

仕上げた予算表の数字を、私が代わって打ち込みます。システムの複雑さを罵りつつ、マークがSubmit (提出)ボタンを押す。ここからオンライン決裁がスタートします。経理や財務の担当者が、順々に承認・不承認を決めていくのです。

やれやれ、やっと終わったという表情のマーク。その時、こんなセリフが彼の口から飛び出しました。

“Now I’m running the gauntlet.”

直訳すれば「さあ、ガントレットを走るか。」ですが、さっぱり意味が分からない。

「ちょっとマーク、ガントレット(ゴーントレッと聞こえます)って何のこと?」

彼の解説によると、二列に並んで向き合った大勢の兵士たちが棍棒や鞭を持ち、間を走り抜ける人をぶん殴る刑罰がかつてあったそうで、この二列の陣形をGauntlet と呼ぶのだそうです。大抵の場合、受刑者は出口まで辿り着けずに絶命するのだと。

私の訳はこれ。

“Now I’m running the gauntlet.”
「さあ、袋叩きに合うとするか。」


針小棒大にも程があるぞ、マーク。

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