2011年6月9日木曜日

Something’s gotta give 何もかも完璧という訳にはいかない

昨日の朝、ロス郊外に住む大ボスのエリックからメールが入りました。
「明日の昼、サンディエゴでミーティングがあるんだ。折角だから、朝一番でダウンタウンのオフィスに寄って、君のプロジェクト・チームのメンバーに会いたいんだけど。」

さっそく、プロジェクト・ディレクターのテリーと対外PMのジムにメールを打ち、都合がつくがどうか尋ねます。ジムはあいにく終日現場に出ているそうで、テリーは朝一番でミーティングがあるという返事。
「私のミーティング会場はあなたのオフィスのそばだから、終わったらそっちに駆けつけるわよ。」
とテリー。

そういうメールのやり取りの後、ダウンタウンのオフィスでセシリアと打ち合わせをしていたところ、テリーが部屋に入ってきました。
「私、エリックと会うの初めてなの。彼、どんな人なの?」
そこで私が、彼の描写を始めます。
「スポーツマンでね。マラソンとかトライアスロンとかやってるんだよ。頭が良くて男前で、部下に優しくて、誰からも好かれてて…。」
「私、そういう人大嫌い。」
と、笑いながらテリーが突っ込みます。
「わたしもイヤ。」
とセシリア。
「明日はアキレス腱を探し当ててみせるわ。」
とテリーがダメ押しします。

えっ?どうして?あんなグレートな人なのに…。私の中では究極の「ナイスガイ」なんだけど…。そういえば妻に昔、いかにエリックが完璧な上司かというエピソードをいくつか披露したことがあるのですが、その時も、
「いやだね~!」
という予想外の反応が返ってきたことを思い出しました。「女性はナイスガイが嫌い」という説、案外当たってるのかも…。

さて、そして今日の朝、約束の時間の二分前。長身のエリックが颯爽と現れます。昨夜はダウンタウンのマリオットホテルに泊まったそうで、
「チェックアウト前にひと泳ぎして来たよ。あそこにはコースロープまで付いた、大きな室内プールがあるんだ。」
と、またしてもカッコいいセリフ。

5分遅れで到着したテリーと三人、今回のプロジェクトについて話し合い、それからビジネス一般に関する情報交換をして、一時間後に握手で解散しました。その後、同僚マリアを訪ね、昨日のテリーとセシリアの反応について意見を聞いてみました。
「私も、そんな完璧な人はいないと思う。奥さんに聞いてみたら分かるわよ。仕事で完璧な人って、大抵家庭に問題抱えてたりするもんよ。」
と、またしてもややネガティブな反応。これにはちょっと驚きました。マリアの義弟も、ものすごく人当たりが良く、誰からも愛されているそうなのですが、妹はいつもプリプリしてるというのです。
「結局、外でいい顔してる分、本来なら家族に向けられるはずのエネルギーが無くなって行くのよね。」
そうして、こんなセリフでコメントを締めくくります。

“Something’s gotta give.”

おお、このフレーズ、知ってるぞ!短縮形をほぐすと、こうなります。

“Something has got to give.”

Has got to はmust と同じなので、

“Something must give.”

ということですね。しかし、ここまで解きほぐしてもやっぱり理解出来ない。この場合、 give が何を意味しているのか分からなければ解読出来ないのです。「サムシングがギヴしなきゃならない。」はぁ?なんのこっちゃ…。

折角のキメ台詞の後なので、マリアに解説をお願いするのは止めにして、その足で弁護士の同僚ラリーを訪ねました。
「そういうタイトルの映画(邦題「恋愛適齢期」)、あったでしょ。ジャック・ニコルソン主演で。」
「ああ、そうだね。内容はよく覚えてないなあ。」
「熟年カップルの話だったと思うんだけど…。」
「あの映画に限って言えば、二人の男女が一緒に過ごす時、お互いどこかで妥協しなきゃいけないって話だと思うよ。両者が好きなようにしていては、衝突が避けられないからね。」
「そうか、でもギヴの意味がいまひとつ分かんないんだけど。」
するとラリーが携帯電話のソフトケースをつまみあげ、ゆっくりと二つの指で押しつぶしました。
「圧力をかけると、物がたわんだりへこんだりするでしょ。それがギヴなんだ。もちろん何かを誰かにあげる、という意味もあるけど、このフレーズの場合は前者だね。」

な~るほど。そんな意味があったのね。でも、ちょっと待てよ。
「お互いどこかで妥協しなきゃならない、という意味だと、マリアのコメントが理解出来ないんだけど。」
「そうだね。今回のケースだと、職場でも家庭でも、人間が全てにおいて完璧でいられるはずはない、どこかにしわ寄せが来るはずだ。そういう意味になると思うよ。」

すっきりしました。これは非常にかっこいい言い回しなので、ちょくちょく使って行きたいと思います。

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