2010年10月8日金曜日

Out of sight, out of mind. そばにいなけりゃ情も薄れる

数ヶ月前まで、オレンジ郡のオフィスに週二日か三日の割合で通っていました。私がサポートするプロジェクト・マネジャーの多くがそこで働いているから、というのが主な理由なのですが、そもそも私が提供しているのは電話とコンピュータとメールがあれば出来るサービス。果たしてそんな頻度でわざわざ出向く必要があるのだろうか、という疑問が日々膨らんで来ました。毎週ホテルに一泊させてもらっているとはいえ、長距離ドライブは肉体的にもキツイし、家族と過ごす時間だって犠牲になります。そこである日ボスのリックに、オレンジ支社に出向く回数を減らせないか相談してみました。
「賛成だよ。君はもう充分顔が売れてるんだから、サンディエゴからだって仕事は出来る。こっちのオフィスに来る頻度を減らせば、君は時間を有効に使える。それに毎週のホテル代だって浮く。うちの部門の経費節減にもなるから、一石二鳥だ。」

というわけで、オレンジ支社への出張は二週に一回まで激減。おかげで、毎日を規則正しく送れるようになりました。定時に会社を出て息子を学校まで迎えに行ったり、帰宅後エアロバイクを漕いだり、と極めて健全な生活がしばらく続きました。ところが最近になって、仕事量がじわりじわりと減って来ているのに気付いたのです。原因が分からず焦っていたところ、ある日経理のベスがオレンジ支社のマーカスと電話で話しているのを偶然耳にして、ギクリとしました。
「私だって、シンスケがそっちのオフィスに行ってる時は困ってたのよ。この頃はほとんどこっちにいるから、仕事をすぐに頼めて助かるわ。」

どうやらマーカスは、私が最近めっきり顔を出さなくなったことで、ベスに不満を漏らしていたみたいなのです。目の覚める思いでした。電話一本かけてくれりゃすぐに応えるのに、と思うのはこっちの勝手で、直接会って仕事を頼みたい人だっているんだよな。思い返せば、私がオレンジ支社内を歩いてる時、
「お、ちょうどいいところに現れたな。ちょっと頼みたいことがあるんだけど…。」
と仕事の依頼が飛び込んで来ることは何度もあったのです。仕事量の減少は、私の営業努力不足に起因していたのでした。

先週ボスのリックを訪ね、事情を話しました。
「これからはまた少し頻度を増やしたいのですが。」
と言うと、
「そうか、早く気付いて良かったな。君の言ってること、良く分かるよ。顔を合わせてないと、存在感も薄れていくものだからな。」
と理解を示してくれました。この時彼の使った言い回しが、

Out of sight, out of mind.

という常套句。「視界に入っていなければ、その存在は忘れられる」という意味。意訳すると、「そばにいなけりゃ情も薄れる」でしょうか。確かにその通りです。長距離恋愛が悲しい結末を迎えがちなのも、そんな人間心理が主要因なのだと思います。
「あなたのこと、ほんとに好きよ。でも私、いつもそばにいてくれる人の方が大事だって分かったの。」

PMたちに突然別れ話を切り出される前に、営業活動に精を出したいと思います。

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