2010年10月31日日曜日

Milk わざと長引かせる

木曜日、久しぶりにオレンジ支社へ行きました。同僚アンと食堂で会った時、彼女の額にミミズ腫れの縫い目が走っているのに気付きました。瞬間、「あ、ハロウィンの仮装ね。」と納得したのですが、ちょっと待てよ、いくら何でも気が早い。まだ三日前だし。

「その傷どうしたの?縫ったの?」
と尋ねると、前日に同僚たちとソフトボールの練習をしていた時、球が当たったのだと言うのです。職場から数百メートル離れたところに市民グラウンドがあり、有志で月に一度お遊びのゲームを楽しんでいます。その日も、試合前に二人一組になってキャッチボールをしていたのだそうです。
「グラウンドの隅っこでデイヴィッドとキャッチボールしてたの。彼の投げたボールが、ちょうど枝と枝の間を抜けたのよね。」
球技場をぐるりと囲んで大振りな常緑樹が間断なく植えられていて、グラウンド脇には、手の届きそうな高さまで葉の繁った枝が垂れ下がっています。
「一瞬、ボールが葉っぱの中に姿を消して、気づいた時にはもう目の前。よける間もなくおでこに命中してたわけ。」
みるみる膨らんでいく額のコブ。彼女を取り巻く人の輪がどんどん大きくなって、加害者のデイヴィッドは青くなって謝り続けていたとか。

「で、縫ったの?」
「違うの、これ。ボールの縫い目の跡がついて、それがピンクに腫れちゃったの!」

後から食堂へ入って来たスティーヴンという若者(彼もその現場にいたそうです)が、笑いながらこう言いました。

“You should milk David!”

仕事に戻ってから、どうにもこの表現が気になりだして、仕事に身が入らなくなりました。ミルクって、動詞になると「金を搾り取る」という意味になるんだと思ってたんです。でもまさか、あの場面で「デイヴィッドから金を取れ」とは言わないよなぁ。
「スティーヴン、さっきの会話で、デイヴィッドをミルクしろって言ってたでしょ。あれ、どういう意味なの?」
この若者とまともに話すのはこれが初めてだったのですが、実に丁寧な解説が返って来ました。

ミルクには、「わざと長引かせる」という意味があり、例えば

He’s milking the task.
あいつ、わざとだらだら時間かけて仕事してるぜ。

などという風に使うそうです。今回のケースでは、アンにボールをぶつけてしまったデイヴィッドの罪悪感を長引かせるために、「傷が後々まで残るんじゃないか」とか、「脳に影響が出たらどうしよう」などと、不安をかきたてるような事をじわじわ言っていたぶってやれよ、という意味に使ったのですね。ま、冗談ですが。

子供の頃、千葉のマザー牧場へ遠足か何かで行った時、乳搾りの実演を見たような気がします。その時、ビュウビュウ飛び出して来るのだとばかり思っていた牛の乳が、実は糸のように細く、ごく少量ずつしか出てこないことを知り驚いた記憶があります。おじさん、あんなに一生懸命絞ったのに、バケツの底にちょっぴりしか取れてないじゃない。大変な仕事だなぁ、と。

ミルクに「わざと長引かせる」という意味があることを、この時の情景を思い出してビジュアル的に納得したのでした。

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