2010年8月29日日曜日

The buck stops here 責任は私がとる

昨日は土曜だというのに、朝から会社のミーティングがありました。コンストラクションマネジメントに関わる社員が集まって、人脈作りをするのが主目的です。オックスナードの工事現場にあるトレーラーオフィスに朝8時集合。我が家からは270km(福岡から鹿児島くらいまでの距離)も離れた場所なので、金曜の晩に現場近くのホテルで一泊しました。

いくつかの議題の後、私がスケジュール作りに関するプレゼンを30分やりました。出席者は総務担当から現場の工事監督まで幅広いので、難しい話は避け、プロジェクトマネジメントの歴史を盛り込んだ写真中心のスライドを作って臨みました。予想通り、これがウマクイッタ。終了後、何人も私のところへやって来て、
「いいプレゼンだった。すごく面白かった。」
と肩をポンポン叩いてくれました。ああ良かった。これで往復8時間の運転も、苦痛でなくなります。

さて、会議の後半は自由闊達な意見交換があり、私の大ボスであるエリックが、
「この中でプロジェクトマネジャーは何人いますか?」
と質問しました。4人ほど手を挙げたのですが、オックスナードのプラント建設プロジェクトのマネジャーであるジムが、
「一応僕がこの仕事のマネジャーだけど、実務はそれぞれのチームリーダーに任せてるんだ。文書管理はそこのロバートが責任持ってやってくれてるし。」
すると私の隣に座っていた若手エンジニアのロバートが、笑いながらこう言いました。

The buck stops there, though.
最終責任はそちらが取るけどね。

The buck stops here というのはかつてトルーマン大統領が使って有名になった表現です。そもそも pass the buck(責任を転嫁する)という言葉があって、これをもじったわけ。「俺のところで責任は止まる」つまり「最終責任は俺にある」という意味です。ま、大統領なんだから当たり前っちゃ当たり前なんだけど。

問題は、何故 Buck(バック)なのか。Buck は1ドル札のことも指すのですが、それだとこの表現全体の意味が分からない。ちょっと調べてみたところ、またしてもこれがポーカー絡みの語源を持つらしいことが分かりました。

19世紀後半、アメリカではポーカーの人気が高かったのですが、いかさまが横行していた。それがもとで殺し合いが絶えなかったので、親は目印としてナイフを持つことになった。そのナイフの柄には大抵、鹿の皮 (Buck) が使われていた。Pass the buck は文字通り次の親にナイフを回す行動で、ここでポーカーの親と「責任」とが繋がるわけ。後にこのナイフが1ドルコインに取って代わられたので、今でも1ドル札をバックと呼ぶのですね。

トルーマン大統領はこのThe buck stops here! で知られているのですが、ロバートは昨日、これをちょっぴり変えて使ったというわけ。

こういう英語表現って、きっとアメリカを一歩出たら通用しないんだよなあ。

8 件のコメント:

  1. こういう英語表現って、きっとアメリカを一歩出たら通用しないんだよなあ。

    そう聞くと、英語って一口にいっても、狭いもんだなと思うよ。その昔、映画だか、テレビドラマだか、イギリス英語とアメリカ英語を吹き替えするってのを聞いて、そりゃおどりたもんだ。
    ネイティブみたいに話せたら・・・っていうけど、英語は非英語圏の共通語の役割なのであって(少なくともぼくには)、そこで何とか通じればよし。
    アメリカでの英語だって、地区によってなまりとか、あるでしょ?
    その点中国語も同じだけども。

    The buck stops there, though.
    これは、たとえばアメリカ全土で通常誰に言っても聞いても通じるわけ?ポーカーを全く知らずとも。

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  2. さっそく、色々な人にThe buck stops here について聞いて来ました。アメリカ人はほぼ全員、この表現を知ってるようです。オーストラリア出身のアンに尋ねたところ、
    「知ってるし意味は分かるけど、使ったことない。」
    とのこと。明日はイギリス出身のニックに聞いてみようと思います。

    みんなの意見を総合すると、こうした慣用句の起こりが古ければ古いほど、国外に広がっている可能性は高いとのこと。この表現も結構歴史が長いから、英語圏であればアメリカ以外の国でも使われているかもしれない、と言うのです。でも、そもそも1ドル札をBuck という習慣なんて他の国にないだろうから、今回の慣用句が外国に渡る理屈は僕には考えられません。ま、もうちょっと調べてみます。

    ところで先日同僚エリカと、こんな話をしました。うちの会社は吸収合併を繰り返して来た結果、今や世界各国に支社があります。英語が共通語ではあるものの、アメリカ人にしか通じないような表現は今後使えなくなるだろう、というのが我々の共通意見。

    香港支社の組織図を二人で見てたら、そこにはTea Lady という役職名の女性が何人も名前を連ねてました。しかも、全員苗字が同じ。二人で「これどういうこと?」と首を捻りました。お茶汲みが正式の役職であるのはまだ理解出来るけど、全員同姓である必要はないよなあ、と。

    いまだに謎です。

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  3. なるほど、なるほど!

    確かに起源が古ければ、今使っているかどうかはあるけれど、「知ってる」「わかる」ってなりますね。納得。やはりカードゲームや競馬あたり、習慣やいろいろな背景が語源にはあるよね。

    tea ladyにはちょっと???ですが、なんとなく想像できます。香港駐在の頃、確かにいました。tea ladyが。ladyというより、お茶兼掃除のような方。ようするにお掃除おばちゃんです。オフィスで仲良しになり、本来業務ではない?かもしれないけど、ボクの買ったカップヌードルにお湯を入れて持ってきてくれたりしましたよ。

    family name が同じなのは中国系ならよくあること。Li, Chen, Wangなどなど。ちなみに、北京時代、たまたま乗ったタクシーの運転手が王軍という名前でした。晩飯打合せ会場までいったら、「終わるまで待ってる」というので待ってもらった(もちろんその間お金は払わない)。打合せが終わり、顔をうる覚えだったので、「王軍!」と呼んだらタクシーたまり場の運転手が3名手を挙げた。同姓同名ってやつです。これ、実話です。さしずめ、「たなかひろし」「すずきとしお」みたいなもんでしょうか。

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  4. そうか、同姓ってそんなにいるんだ…。じゃ、たまたまTea Lady 全員が同じ苗字ってこともあるんだね。

    さて、本日カナダ出身のジェフにも聞いてみたけど、カナダはアメリカのテレビ番組がまるごと見られるので、文化的にはほとんど同じ国みたいなもんだ、とのこと。もちろん、Buck の表現もよく知ってました。

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  5. Ter lady 、同一人物が全員のお茶くみをしているということはないんでしょうか?

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  6. おお~っ、それは盲点でした。案外それが正解かもしれませんね。組織図に同じ姓名が何人も載っていたのは、どの部署も同じお茶くみさんに来てもらっているということだったんでしょうね。

    なんか、なぞなぞみたい。

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  7. この古い記事に投稿なんですがACクラークの「宇宙のランデブー(Rendezvous with Rama)」にこの表現が出てきて、調べてここにたどり着きました。クラークはイギリス人でスリランカ在住。2001年を書いた人だから、米国ともつながってますけれども。

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    1. そろそろ更新再開しようかなと思っていた矢先にコメント頂きました。有難うございます。これはアメリカに限った表現じゃなさそうですね。

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