2010年5月17日月曜日

恐るべし、ベアリング

漢字の「生」には、訓だけでも11通りの読み方があります。日本語学習者には酷だよね、という話を、先日息子の同級生のお母さんとしました。
「英語って、色々意味はあっても読み方はひとつだから楽よね。」
と言う彼女。確かに。

でもね。「簡単な単語に意味が色々」ってのも、それはそれでキツい場合があるんですよ。私にとってそのチャンピオンが、

Bear

です。子供を「産む」、利子を「生む」、実を「結ぶ」、などは感覚的に何となく分かるけど、憎しみを「抱く」、関係を「持つ」、と抽象性を増して来ると、併走していたランナーにじわじわと距離を離されていくような焦りを感じます。さらに姿勢を「保つ」、態度を「とる」、かばんを「運ぶ」、重さを「支える」、責任を「負う」まで来ると、
「もうやめてくれ~!」
と悲鳴をあげたくなります。しかしそれでも容赦なく畳み掛けてくるこの悪魔の単語。「圧迫する」、「影響がある」、痛みに「耐える」、「我慢する」、などなど。

実は、仕事の現場でよく耳にするのが、この「我慢する」です。電話の相手に、「今調べるからちょっと待ってて。」と断る場合に使えるのが、

“Bear with me.”

これは私も愛用しているフレーズで、とても便利。ちょっと待たせちゃうけどごめんね、辛抱してね、という意味。この単語を他の用法で使った記憶はまだありませんが、これからじっくりと腰を据えてひとつひとつ試して行くつもりです。

実は、このBearがBearingに変化すると、さらに話がややこしくなります。「態度」、「ふるまい」、「関係」、「方面・方角」、「出産」、そして「軸受け(ベアリング)」とてんでばらばらな意味になってしまう。恐るべし、ベアリング!

去年の今頃だったか、長い休暇から戻って来た同僚のシェリルに、
「久しぶり。どうしてる?」
と声をかけたところ、

I’m still trying to find my bearings.

という答えが返って来ました。思わず二度も聞き返してしまいました。この場合のBearingsは、「自分の置かれている状況」という意味で、つまり彼女は、「休み明けでまだ仕事に追いついてないのよ。」と言いたかったのですね。これは「クールな英語表現」に認定していいフレーズだと思います。いつか使ってみたいなあ。

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